たまにあること

たまにあること

 目を覚ますとじんわりと頭痛がした。
「⋯⋯雨でも降るのか?」
 生憎そんな理由で頭痛になどなったことはこれまでないが、世の中にはそこそこいるらしい。
 最近の不安定な気候では難儀なことだと思う。
 かといってさっきの通りそういう理由で体調を崩したことは一度もないので、いま起こっている頭痛の原因はそれではない。
 誘われて酒を飲む知人はいることにはいるがその連中と飲む時もほどほどで済ませているし、昨日は飲んでいない。
 つまり身体的な理由ではないということになる。
 そうなると、理由はひとつしかない。

「ああ、昨日の残りがついてましたね」

 ひょいと見えないなにかを取り上げる姿が見えた途端、頭痛も消えた。
 ついでになにを掴んでるのかもよくわからないそれを躊躇いなく口の中に放り込んだのは無視した。
 途端、なにかが潰れるような音と鳴き声がしたのも気のせいにした。

「そんな大層な場所に行ったつもりはなかったんだがな」
「だからですよ。小物すぎて僕も見逃してました」

 なにもなかったのようにそう言って向こうが嗤う。

「あの程度でも調子を崩すなんて、大変ですねえ」
「⋯⋯普通の人間はそんなもんなんだろ」

 比べる対象が規格外しかないのであえて大きな括りで話を終わらせた。

「名所なんてものはやはり近寄りたくないものだな」
「それがお仕事ですからしかたないですよ」
「仕事にした覚えはない」
「そう思われていれば同じです」

 愉快そうに嗤うそれを見てると違う頭痛がしそうだったのでひとまず飯を食うことにした。



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