及川小夏と、なにも言う前に少女は自分のことを話した。
あまりにも無防備すぎて頭が痛い。
名前からあらゆることが見知らぬ相手に知られてしまう危険性があり、目貫は知らないが制服を着ていればそれが何処のものかわかるものにはわかるというのにこの危機感のなさはどうかと思わなくもない。
しかし、そういうことを指導するのは目貫の役目にはない。
痛い目に遭う前に誰でもいいから注意してもらいたいものだと他人事として思い、自分を訪ねてきた目的のことにだけ集中することにした。
「それで、呪いの相談というのは?」
「あの……これです」
そう言って持っていたカバンから取り出したものを見て、目貫は思わず感想を漏らした。
「こりゃまたオーソドックスな代物だな」
取り出したのは少女の外見や年齢にはあまりにも不似合いなものだった。
藁を束ねて人形にしたもの、といえば誰もがそれがなにかとその形を浮かべられるもの。
呪いと一般の人々が聞いて浮かべるもののひとつ――藁人形がそこにあった。
もっとも、正確に言えばそれは『藁』人形ではない。
毛糸だろうそれで作られたものは、形だけは本来のものと同様だ。
「いまも子どもに人気なのか? もっと今風なもののほうが興味を引きそうなものだろう」
「そういうのは、よくわからなくて」
相手に向かって言ったつもりはまったくなかったが、小夏は勘違いしてそう答えた。
「実際は藁を用いるものだが、これがどういうものかは理解しているのか?」
無意識に試すような口調になったことに気付き鼻白みながら返事を待つと、小夏は授業で指名された生徒のようにおどおどしながら口を開いた。
「夜中に、あの、これに釘を、その」
「大雑把には理解しているわけか。それを受けて聞きたいことでもある……何故、呪われてる本人がそれを持っている?」
藁人形は人目につかない場所で呪詛を行う道具だ。それを持ってくるというのは道理に合わない。
しかし、そう聞いた途端小夏は顔色を悪くして俯いた。
後暗いことを隠していたことを見抜かれたものがする顔。
それを見て、ぴんときた。
「なるほど、勘違いしていた。どう呪われてるか知らんがひとついまのでわかった。作ったのは誰でもない自分だってことか」
はいともいいえとも言わず真っ青のまま黙っていることが、この場合は答えだ。
「自分で作ったものに呪われてるから助けてくれと? 自業自得という言葉は教わったか?」
説教をするような立場ではないが、気を抜くと説教じみてしまうのを気を付けたつもりだが、言われたほうは叱責されたと思ったらしい。
「ちが、違うんです! わたしはただ……!」
思わずというふうに叫んでから、小夏は口を閉ざすが今更遅い。
「聞くが、中に呪う相手のものをなにか入れたか?」
相手が子どもだとは理解していても、目貫のもともとの性格も相まって詰問口調になってしまう。
「入れて、ません……」
あまりにか細い声に、呪い絡みでなければやっていない万引きの疑いを責められているような構図だなというのが浮かび、目貫は一気に嫌気がさしてきた。
こういうことは自分には向いていない自覚が目貫にはある。
かといって甘やかすなどそれこそ人生を振り返ってもした記憶がない目貫にとって、この状況はさっさと終わらせたい以上の気持ちが浮かばない。
受けろと言った元凶は、さっきからひと言も口を出してこないしそちらの気配がするほうを目貫は見ないようにしている。
この状況を楽しんでる底意地の悪い笑みを浮かべているとわかりきったものを、わざわざ見る気になるはずもない。
意図的に大袈裟な息を吐き、目貫はできる範囲で口調が厳しくならないよう加減をしながら口を開く。
「わかった。落ち着いて事のきっかけからなにもかもを聞かせてもらおうか」
ここは放課後の職員室でも保健室でもないんだがな。
内心そう思いながら相手の話を聞くことにした。
懐古的で一般的な
相談承りマス