その夜、気配を感じて目貫は目を開いた。
目の前にはフード付きのパーカーとジーンズを身につけているが長時間水に浸かっていたため膨張した身体をした男が立っていた。
「なんだ? 苦情でも言いたいのか?」
冷静に目貫はそう言い、布団から起き上がると男を見た。
「言ったはずだぞ、嘘やごまかしではどうにもならん、責任は取れんと。俺は現場に行くとは言ったがお前を助けるとはひと言もいってない。自業自得なのを認めずにこちらに八つ当たりとは呆れてものも言えんな」
言いながら目貫は煙草に火をつけたが男の水滴で消されて舌打ちした。
「満足か? まあ不満だと言われても困るんだがな、ここに来なければ少しはこの世に留まれただろうに」
その言葉を待っていたように男の背後に凶悪な笑みを浮かべたそれが立ったと思った次の瞬間、男は頭から喰われていた。
噛み砕く嫌に生々しい音を立てながら、瞬く間に食い尽くしてそれは嗤った。
「こんなものを喰うためだったのか?」
「そうでもあるし違うとも言えますね。死相はくっきり浮かんでましたから近々死ぬなら呪ってる相手の恨みを晴らさせてから腹の足しにしてもいいでしょう?」
「俺から見れば今回は時間の無駄だったな」
「哀れに思ったからじゃないんですか?」
「そんな善意はない」
目貫はそう言い切り、人でない人の心など理解しないものはそれを嗤い、その夜を終えた。
数日後、アパートの一室でまるで数週間は水の中にいたような謎の溺死体が発見されたというニュースがほんのわずか話題になったようだが、目貫には一切興味のないことだった。
お迎えにあがりました
相談承りマス