お迎えにあがりました

「……そんな状態が二ヶ月くらい続いてて」
「タクシーが来ることがどう呪いなんだ?」
 率直な目貫の感想に、男はもごもごと自信なさげに口を開く。
「そのタクシー、なんか変なんですよ。一度しっかり見てやろうとしたことがあるんですけど、どうしてか運転手の顔が見える位置にあるはずなのにぼんやりしてて思い出せないんです。車のナンバーも同じで」
「それだけならそれは良くて怪奇現象だろ」
「でも、あの、もしそれが俺を乗せようとしてるとしたら、なんていうか誰かに狙われてるみたいじゃないですか」
「その心当たりがあるのか?」
 目貫の問いに男はわずかに沈黙した。
「……いいえ」
 その答えに目貫は軽く息を吐いた。
「心当たりがないなら呪われる理由もないだろう。ここに来るよりお祓いなりに行ったらどうだ」
「こんな話、わけわかんないことしてるやつ以外に信じてもらえるわけないじゃないですか!」
 冷静な目貫の言葉にまるで子どもの癇癪のように男は叫んだ。
 身勝手な上に無礼なその声に、ますます目貫は冷静になる。
 目貫が呪いにまつわる相談を聞いているという話は、それを必要としている者以外には広がらないという特性がある。
 原因は噂を伝えているのがさっきから壁にもたれてにやにや笑っているモノだからなので、この男に伝えたことにもなにかしらの旨みが少なくともそれにはあるのだろう。
 もちろん、善意からではないのはわかりきっている。
「しかたない、一度現場を見ることはしよう」
 目貫がそう答えたのも、男を助けるためではまったくなかったのを知らないのは当人だけだった。
「ひとつ聞くが、そのタクシーが来るのは毎日なのか?」
「いえ、金曜の夜だけです」
 その心当たりも当然ないと男は答えた。



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