扉を開いた先に立っていたのは二、三十代の男だった。
フード付きパーカーに安手のジーンズという何処にでも転がっていそうで目貫には個性らしい個性が見いだせない。
染めて短い髪も軽薄さを際立たせているだけだが、本人はそれが似合っていると思っているのだろう。
そんな、目貫からしたらありふれた容姿のありふれた男は、部屋に入るなりこう言った。
「あの……匿名でも構いませんか?」
その言葉に目貫は眉を顰めたが、別段珍しいことではない。
なにせ相談内容は呪いにまつわる話だ。
後暗いことがあるなら名乗りたくないのは当然だし、そういう連中は時折来るので慣れている。
「構わんが、呪いに影響がある場合は名乗ってもらう。できるか?」
「え、あ、は、はあ……」
明らかに嫌々という態度で男が答えるのを見て目貫の眉の皺は深まった。
ここまで露骨に自分を隠したがるときはろくな話ではない。
有り体に言えば自業自得の上に心当たりもあるくせにそれを知られたくないやから。
目貫が相手にしたくないと思う手合いのひとつだった。
「先に言っておくが、こちらの質問に正直に答えん場合、責任はとれんぞ」
「そ、そんな無責任な」
突き放すような目貫の言葉に非難めいたことを言う男を睨みつけて黙らせる。
「何処がだ。嘘とごまかしの情報で事態をどうしかしろというほうが馬鹿げてる。気に食わんのならそのまま帰れ」
脅すように釘を刺すと男はしぶしぶ頷いたが納得していないのは明白だ。
そして、相手がそうくるときの目貫の方針は決まっているがそれは至ってシンプルなものだ。
素直に話せばそれなりの対応をするが、そうでないならそうでないなりの対応をする。
それだけのことだった。
お迎えにあがりました
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