人魚を買った男の話

人魚を買った男の話

 露店で人魚を買った。
 噂に聞く人魚というものを実際に見たことがいままでなかったことと、安くしとくよと提示された金額が財布から消えても生活にそれほど痛手になるというほどでもなかったからということもあったのだろう。
 噂では人魚は美しいと聞いていたが、さて、これはどうなのだろう。
 審美眼というやつが備わっていないと自覚している人間から見ると、その人魚の顔は何処にでも転がっている餓鬼と同じようにしか見えなかった。
 水槽を買うのも面倒なので、手近にあった桶にそいつを入れて飼うことにした。
 名前を付けるのも面倒で、適当に『アレ』とか『ソレ』と呼んでいた。