懐古的で一般的な
ある噂がある。
もしも呪われてしまったとき、助けてもらえる場所がある。
それは寺や神社ではない、一見普通の住まいなのだという。
けれどそこに行けば助けてもらえる。
出処も真偽も確かめようのない無責任な、ついでに言えばさして流行るとは思えない噂。
なのに、それを必要とするものには何故か届き、それ以外には不思議と広まらない。
それを聞いて信じるものもどうかしていると思うが、信じた上で噂で言われている住居を訪れるなどどうかしている。
なにより――その噂の場所に住んでいる目貫にとっては迷惑以外のなにものでもない。
まして。
「……あの、呪いから助けてくれる人がここにいるって、聞いて」
「見知らぬ人間には近付くなと最近の子どもは教わってないのか?」
こちらを見上げる幼い少女に、目貫はうんざりしたようにそうぼやいた。
制服姿でメガネに三つ編み姿という、およそ冴えない今時にしてはオシャレというものにあまりこだわりがない、よく言えば素朴なその少女はどう見ても中学生かそこらだろう。
そんな子どもが、昼間とはいえ明らかに怪しい噂の住居に住んでいるものを訪れるというのは無防備という言葉で済まされない。
「悪いが、人違いだ」
「でも、噂じゃここだって」
「噂は噂だろう。ここには俺しか住んでいない。そういう特別ななにかがあるように見えるか?」
いい歳をした男と少女の組み合わせなど、ひと目で通報される組み合わせだ。
なにより、目貫は子どもというものが苦手だった。
中学生ならまだ多少はマシではあるが、子どもには理屈が通じることは少ないし、大人の言うことを素直に聞かないようなもの、好意的になる要素が少なくとも目貫には存在しない。
「でも、あの、ほんとに困ってて」
見た目によらず頑固だなと眉間にシワを寄せているとき、背後から声がした。
「大丈夫ですよ先生。その子の相談は『本物』ですし、ここに来たことは誰にも見えませんから」
どうやら、受けろということらしい。
大きくため息をついて、目貫は少女を見た。
「……とりあえず、入れ。こんなところを人に見られたくはない」
いまの言い方は誤解を生むなと思ったものの、なにかに追い詰められた少女は素直に中に入り、それはそれで少女の今後が不安になった。